2019年5月23日の第62回日本糖尿病学会学術集会における、医療法人社団 桜一会 かんの内科 院長 菅野一男 先生の発表です。


ダパグリフロジン投与による運動量、エネルギー消費量の変化

研究概要

【目的】血糖コントロールの安定した2型糖尿病患者を対象にダパグリフロジンを投与群(ダパ群)と現行の治療を継続する群(現行群)に無作為に割付け、非盲検多施設共同研究により、総エネルギー消費量、運動量の変化を確認した。

【方法】ダパ群は現在実施している食事・運動療法及び糖尿病治療薬に加え、ダパグリフロジン5mgを1日1回、12週間投与。現行群は現在実施している治療法を継続した。0週と12週間後に、ライフコーダGSにより総エネルギー消費量と運動量を計測した。

【結果】ダパ群の投与前総エネルギー消費量(mean±SD)は1862±324kcal/日、投与12週後は1678±279と減少した(p<0.0001)。現行群でも0週から12週で総エネルギー消費量は減少した(p=0.0006)。ダパ群と現行群間で有意な差は認められなかった。運動量も同様の傾向だった。

【結論】ダパグリフロジン投与により、ダパ群と現行群の総エネルギー消費量と運動量に群間差は生じなかった。

発表者 医療法人社団 桜一会 かんの内科 院長 菅野一男 先生に、本研究のお話をうかがいました。


まずはこの研究を実施したきっかけについて教えてください。
以前、自施設で研究した結果、SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン)の投与前後では、エネルギー摂取量には違いは生じなかったことを発表しました。その後、多施設共同研究として、ダパグリフロジンについても同様の研究を実施した結果、やはり投与前後では、エネルギー摂取量には違いは生じなかったことがわかりました。その結果については、今回の学術集会で北岡先生がご発表されております。一方で、エネルギー摂取量の変化だけではなく、総エネルギー消費量や運動量の変化も検討しておくべきだと考えて、この研究を実施しました。
いずれの群でも総エネルギー消費量が減少していますが、この結果から考えられることを、教えていただけませんか?
総エネルギー消費量は、投与前後で変化しないのではないかと考えていましたが、実際は両群ともに総エネルギー消費量が減っていました。この背景としては、患者さんが研究に参加することとなって、記録をつけ始めると、治療意欲がわき、運動療法に力が入った方が多かったことが考えられます。しかし3ヶ月後までずっと運動を継続することは難しく、結果として総エネルギー消費量が減少した可能性があります。今回はいずれの群でも同様に下がっておりましたので、特定の薬剤による影響ではないと考えます。
継続治療群での使用薬剤に、何か特徴はありましたか?
特にこれといった特徴はありません。経口薬を使っている人もいれば、インスリンを使っている人もいました。
他のSGLT2Iでも同様になりそうでしょうか?
やってみないことにはわかりませんが、エネルギー摂取量が変わらなかったということは、イプラグリフロジンにおける結果と同様ですので、他のSGLT2阻害薬でも同様の結果は出る可能性はあります。
運動量が増えた人、とても下がった人、など特徴のある患者背景などはありましたか?
特にそこまでの詳細な解析はしていません。また検討してみたいと思います。
最後に、今後の診療や研究に関する抱負や展望などを教えてください。
今回の一連の研究結果が出るまでは、SGLT2阻害薬を使うと食欲が亢進して体重減少が鈍ってくる、あるいは血糖値降下作用が弱まってくるのではないか、と言われておりました。 しかし、研究の結果、そうではないことがわかりました。 もちろん、個々の患者さんでは、違った傾向を示す方がいるかもしれませんが、薬を使う患者さんの集団全体では、食欲の亢進は認められませんでした。今回のような「理論的にはこうなりそうだが、実臨床ではどうなのか?」というクリニカルクエスチョンを解明すると、先行するイメージで決めるのではなく、エビデンスに基づいた治療ができるようになります。今後もこのような研究を続けて、患者さんにとって最適な治療ができるように、貢献できればと思います。

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