2019年5月24日の第62回日本糖尿病学会学術集会における、 糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI 院長 戸崎貴博 先生の発表です。


SGLT2阻害薬投与前1年間と投与後4年間における
eGFRの変化に関する検討

研究概要

【対象】2型糖尿病外来患者でSGLT2阻害薬を投与した395例。

【方法】SGLT2阻害薬投与前後のデータを後ろ向きに統計解析した。eGFRについては、eGFR90未満の群とeGFR90以上の群にわけて検証し、その他の検査値は対象患者全体での変化を検証した。

【結果】eGFR 90未満群(179例)のeGFR変化量は、投与1年前~投与開始時は、-3.04±6.10/年(p<0.001)と有意に低下していたが、開始時~1年後は、-0.93±7.24/年(p=0.210)、1~2年後は、+0.99±6.00/年(p=0.176)有意な変化なく、2~3年後は、-2.16±6.25/年(p=0.027)と有意に低下、3~4年後は、-1.77±4.81/年(p=0.072)と有意な変化なしであった。

eGFR 90以上群(164例)eGFR変化量は、投与1年前~投与開始時は、+1.22±8.27/年(p=0.298)と有意な変化はなかったが、開始時~1年後は、-5.06±12.46/年(p<0.001)と有意に低下し、1~2年後は、-0.51±8.71/年(p=0.604)、2~3年後は、+1.96±8.53/年(p=0.108)と有意な変化なし、3~4年後は、-2.99±8.42/年(p=0.040)と有意に低下した。

HbA1c値、体重、血圧、脈拍数、AST、尿酸値も有意に低下した。

【結語】実臨床においてもSGLT2阻害薬による腎保護の可能性が示唆された.

発表者 糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI 院長 戸崎貴博 先生 に、本研究のお話をうかがいました。


まずはこの研究を実施したきっかけについて教えてください。
SGLT2阻害薬の腎保護効果は、大規模スタディでは示唆されています。しかし、治験という特殊な環境ではない、実臨床における長期投与の実態の把握をしたいと考えました。
今回の研究で、特に腎機能の改善が見込まれるような、患者背景の特徴などはありましたか?
今回、eGFR90以上、90未満にわけた解析の結果、eGFR90以上の群ではeGFRの低下が認められ、eGFR90未満の群では有意な上昇が認められました。
eGFR90以上の患者さんは、高血糖による過剰ろ過を起こしているので好ましくない状態で、eGFRが下がることは、正常の状態に戻ったこということです。SGLT2阻害薬で尿細管におけるナトリウムの再吸収が促進することで、マクラデンサを介して、糸球体の過剰ろ過が解除されたことを意味します。このため、eGFR90以上の患者さんにおいて、eGFRが下がることは特に問題ではなく、むしろよいことです。一方eGFRが90未満の患者さんではeGFRが上がることで、腎保護効果が示唆されました。
SGLT2阻害薬の種類による違いはありましたか?
個別の解析はしておりませんが、どの薬剤も腎保護効果に大きな違いはない印象です。 DPP-4阻害薬ほど、個々の薬剤による違いはないかもしれません。
今回、尿中アルブミンの検査結果については、横ばいでしたが、こちらについてはどうお考えでしょうか?
今回は対象者全体での尿中アルブミンの解析結果を示しましたが、腎症のステージ別での解析では違った結果になる可能性があります。以前、SGLT2阻害薬の別研究で解析した際は、30未満、30以上300未満、300以上での層別解析では、30以上の群では有意な低下が認められました。今回の研究では、eGFRを主な評価軸としていたため、尿中アルブミンの詳細な解析はこれからになりますが、同様の結果が得られるのではないかと思います。
eGFRや尿中アルブミンなどの腎臓の指標について、患者さんはどれぐらい意識していますか?腎臓のケアを含めて治療をされる際に、工夫されていることなどがあれば教えてください。
腎症のことをよく理解・意識されている患者さんは少ないです。 尿中アルブミンの測定を定期的にすることが重要だと、普段からお話しはしております。ご自身の検査結果でアルブミン尿が出てから、意識される方が多いです。その際は、正常値がどのぐらいであるか、また正常値に戻すためには、どの薬で腎臓を保護していくかを説明すると、糖尿病性腎症を意識して治療に取り組んでいただけます。
最後に、今後の診療や研究に関する抱負や展望などを教えてください。
大規模スタディで示されたデータが、リアルワールドの臨床でも、本当に正しいことなのかを、今後も検証していきたいと思います。治験は特別な環境のため、予期せぬことが生じる、長期にわたる実臨床での治療とは少し違います。新しい薬が出たら、その効果をできるだけ早く臨床で検証することで、最適な治療を選ぶための情報を発信できればと思います。

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