2019年5月23日の第62回日本糖尿病学会学術集会における、ともながクリニック 糖尿病・生活習慣病センター 院長 朝長修 先生の発表です。


経口血糖降下剤増量の効果

研究概要

【目的】経口血糖降下剤の増量効果を検証すること。

【対象】当院に通院中の、血糖降下不十分な2 型糖尿病患者のうち、 経口血糖降下剤 を増量した457名( 年齢 55±10歳 )を対象とした。

【方法】以下の通り各薬剤を増量して、 3ヶ月後までのHbA1cと体重を観察した。 BG群238名は、1500 mgを2250mgへと増量した。SGLT2阻害薬群58名の内訳は、Empagliflozin: 20名 、Dapagliflozin: 31名 、Luseogliflozin: 17名 、Ipragliflozin: 18名 であり、これらをそれぞれ増量した。DPP4阻害薬群161名 の内訳は、Anagliptin:42名 、Teneligliptin: 68 名 、Vildagliptin: 20名 、Sitagliptin: 32名であり、これらをそれぞれ増量した。

【結果】 HbA1cは、 増量時、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後の順に、以下の通り有意な改善を示した。
BG群:8.02 ±1.14% → 7.80±1.07% → 7.57±0.94% → 7.41±0.91%
SGLT2阻害薬群:7.75±1.16% → 7.63±1.12% → 7.54±1.15% → 7.53±1.07%
DPP4阻害薬群:7.60±0.86% → 7.55±0.88% → 7.47±0.97% → 7.31±0.78%
体重は3群とも変化は認められなかった。

【総括】 HbA1cは 、BG増量後、3ヶ月後に約0.6%、SGLT2阻害薬の増量後は約0.2%、DPP4阻害薬の増量後は約0.3%の有意な改善を示した。体重に関しては、SGLT阻害薬群における用量増加を含め、全ての群において、有意な減少は認められなかった。

発表者 医療法人社団ライフスタイル ともながクリニック 糖尿病・生活習慣病センター 院長 朝長修 先生 に、本研究のお話をうかがいました。


まずはこの研究を実施したきっかけについて教えてください。
経口血糖降下薬は増量できますが、実臨床における増量効果については、あまり報告がありません。治験のような厳格な管理下ではない、実臨床の中での増量が、どのような影響を及ぼすのかを検証しておくべきではないかと考えました。
今回は、BG、DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬を対象としておりますが、その背景について教えてください。
SU、α-GI、チアゾリジン、グリニドなどの薬剤もありますが、現在の主流はBG、DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬です。最新の治療法で検証することがよいと考えて、この3種類としました。
SGLT2阻害薬、DPP4阻害薬は、今回それぞれ4種類にて検討されたようですが、個別の薬剤で、増量によるインパクトが大きいものはありましたか?
SGLT2阻害薬もDPP4阻害薬も、同種同効薬の中では、薬剤別の増量効果については大きな違いはありませんでした。系統の違いでは、BGの増量が、血糖降下としては一番効果的でした。
今回の研究を受けて、今使っている薬剤を増量するよりは、他の種類を加える、という方が、選択肢になりそうでしょうか?
個人的には、現在使っている薬剤を増量した方が、副作用が起こる確率は低くて安全性は高いと思います。一方、今回の増量の結果から、血糖値改善のみを考えると、別の薬剤を追加した方が改善されると思います。有効性と安全性の両面を考慮して、薬剤を選択する必要があります。
ガイドラインでの血糖管理としては、HbA1cの目標値としては7.0%未満です。今回の研究では、増量後も、まだ平均的に0.3-0.6%の低下が必要となりますが、残りは食事運動療法で補うこととなりますか?目標達成するための秘訣や、患者さんとのコミュニケーションにおける工夫などがあれば教えてください。
全患者さんが7%未満を達成するのはなかなか難しいです。当院の位置が新宿ということもあり、多忙なビジネスマンの患者さんも多く、不規則な生活の方も相当おります。食事・運動療法については、院内スタッフと連携していますが、実臨床での目標値達成には限界はあるかとは思います。 一方で、患者さんが治療のモチベーションが上がれば、薬剤の効果だけではない改善が期待できます。治療モチベーションを上げる方法としては、「毎日体重を測定すること」が、簡易かつ効果的な方法だと思います。毎日体重を記録することで、自分の体への関心が高まります。その記録を受診時に持参して、見せてくれる患者さんもおりますが、こうしたモチベートができれば、結果もついてくることが多くなります。
最後に、今後の診療や研究に関する抱負や展望などを教えてください。
糖尿病においては、様々な機序の薬がありますが、食事療法と運動療法は欠かせません。当院では糖尿病ケアの経験豊富なスタッフが揃っており、食事療法と運動療法に関しても、患者さんに丁寧に説明し、フォローいたします。薬剤を適切に使うだけでなく、患者さんと並走するように一緒に治療していくことのできるクリニックでありたいと思います。

関連記事