2019年3月30日の第83回日本循環器学会学術集会における、名古屋大学先進循環器治療学 柴田 玲 先生のプレス発表です。


Efficacy and safety of SGLT2 inhibitors in elderly diabetic patients with heart failure.

研究概要

【目的】
65歳以上の高齢糖尿病患者の20%以上が、心不全を発症することが報告されている。一旦発症すると5年生存率は約20%であり、予後が悪く、今後ますます高齢化が進む日本にとって、本件は課題の一つである。 SGLT2阻害薬は、尿中への糖排泄を促し血糖値を低下させる新たな糖尿病治療薬で、心血 管イベント抑制効果が注目されている。しかし、高齢者への投与では、脱水や脳卒中への注意が必要であると喚起されている。 本研究では、予後不良な高齢糖尿病患者の心不全対策として、SGLT2阻害薬の有用性を検討した。
【方法】
高齢糖尿病患者を対象とし、SGLT2阻害薬による検査値の変化を6ヶ月間観察した。 また、急性心不全で入院した高齢糖尿病患者を対象とし、SGLT2阻害薬を服用していた症例と、服用がなかった症例について、退院時のパラメータを比較した。
【結果】
117名の高齢糖尿病患者(平均年齢73歳)にSGLT2阻害薬を開始し、6ヶ月間経過観察したところ、重篤な副作用は発生せず、血糖値、HbAlc値の有意な低下を認めた。期間中、下大静脈径(脱水の指標)を超音波検査にて定期的に測定したが、下大静脈径に変化なく、血管の虚脱を引き起こすような脱水は認められなかった。BNP(心不全の指標)が高値な患者が78名含まれていたが、SGLT2阻害薬を開始して半年後には有意に低下した。

高齢糖尿病患者(平均年齢73歳)で急性心不全を発症した症例に対して、SGLT2阻害薬を開始した12例と、従来の心不全治療を開始した19例を比較検討した結果、SGLT2阻害薬を早期から導入した群では、入院期間中の急性腎障害の発症頻度が有意に低かった。また、退院時のループ利尿薬の1日平均投与量は、SGLT2阻害薬投与群13mgに対し、非投与群33mgと有意差が認められた。
【今後の発展性】
高齢糖尿病患者の心不全治療下でのSGLT2阻害薬の使用は、腎障害を減らし、利尿剤の減量にもつながる。SGLT2阻害薬は、今後、心不全治療の選択すべき薬剤となりうる可能性がある。

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