Effect of Luseogliflozin and Voglibose on Heart Failure with Preserved Ejection Fraction in Diabetic Patients: A Multicenter Randomized-controlled Trial

研究概要

【目的】拡張機能障害心不全合併の2型糖尿病患者において、SGLT-2阻害薬(ルセオグリフロジン)追加投与がBNPに与える効果をα-GI(ボグリボース)と比較検討すること。

【方法】岡山大学循環器内科(伊藤浩教授)を中心とする多施設共同前向き介入研究。LVEFが保たれており心不全徴候の既往がある2型糖尿病患者のうち、食事・運動療法、薬物療法によっても十分な効果が得られず、主治医が内服薬の追加が必要と判断した患者を対象とし、ルセオグリフロジンもしくは ボグリボースを追加し、12週間フォローアップした。

【結果】有効性解析対象者は、ルセオグリフロジン群88名、ボグリボース群84名だった。主要評価項目BNPの12週間後の変化率は、ルセオグリフロジン群-9.0%、ボグリボース群-1.9%であり、両群間に有意差は認められなかった(p=0.26)。副次評価項目であるLVEF, E/e’, 体重、HbA1cの各項目の変化率についても、両群間に有意差は認められなかった。

発表者 岡山大学病院循環器内科 江尻健太郎先生 に、本研究のお話をうかがいました。


今回の結果としては、主要評価項目においては有意差が出ませんでしたが、どのような理由が考えられますか?
要因としては2つ考えられます。

1つは対象となる患者さんの選択基準の設定の問題、もう1つは統計的な仮説の問題です。

選択基準については、重症の患者さんだけを対象とした場合、症例の集積が困難となります。今回は母集団を広げ、症例を集積することを優先し、比較的軽症の患者さんも対象としました。心房細動のある患者さんでのサブグループ解析では、有意差が生じておりましたので、症状の重さによるところが大きいかと思います。

また、統計的な仮説を立てる際、ルセオグリフロジン群では、BNPが30%低下すると見込んでおりましたが、実際は約10%の低下でした。研究開始時には分かりませんでしたが、両群間の差を検証するには、サンプルサイズをもっと大きくしなければならなかった、ということが判明しました。

今回はルセオグリフロジンの比較対照薬はボグリボースでしたが、他の糖尿病治療薬と比較した場合、どのような結果となりそうですか?
まずは、今回の対照群をαグルコシダーゼ阻害薬のボグリボースとした経緯から説明します。

比較研究としては、プラセボを対照とすると、その効果がわかりやすいです。しかし、既に症状のある患者さんに対してプラセボを使うことについては、倫理的な問題もあり、臨床研究では現実的ではありません。今回、以下の3点を考慮して、対照薬を決めました。

・心不全に対する安全性が確立していること
・患者さんにとって費用負担が小さいこと
・糖尿病学会の薬剤機序分類にて、研究薬と同じ「糖吸収・排泄調整系」であること

他の糖尿病治療薬と比較するためには、こうした様々な面を考慮しなければならず、効果の面だけを見て、可能性を言及することは難しいです。

フォローアップ期間が、もう少し長ければ、結果が変わりそうでしょうか?
ルセオグリフロジンに限らず、SGLT2阻害薬は、早期に効果が表れる傾向があります。 今回の研究でも、検査値としては、4週以降はプラトーともとらえることはできそうです。長期投与とすることで、結果が大きく変わることは、現時点では考えにくいという所感です。ただし、実際にフォローを続けてみなければ、どうなるかはわかりません。
安全性については、いかがでしたか?
重篤な有害事象としては、ルセオグリフロジン群に低血圧の症例が1例ありました。副作用の発現率は、両群間に有意差は認められませんでした。どちらかのリスクが高いということはないと考えます。
最後に、今後の診療や研究に関する抱負や展望などをお聞かせください。
炎症マーカーについては、今後何か新しい結果が出せる可能性もあるかとは思います。まずは今回集積できたデータを、さらに細かく解析し、新規エビデンスを発信したいと思います。

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